「寄席」という本
高校生の時にクラスでK口君が小冊子を出した。
ガリ版刷りで、A4を四つ切りにしたサイズであった。
月一回程の不定期刊であったと思うが、残念ながら、ほぼ一年ほどの短命であったと思う。
表紙からクラス有志のそれぞれの投稿寄稿で成り立っていた。
その当時でも、寺山修二風な味を持ったS村の詩やイラストなどが人気であった。
なかでも「高田馬場に雨が降る」、「ばばあは握るか五百円」などの詩のフレーズは、
才能豊かでショッキングなものであった。
また、高田馬場の穴場紹介と称してのジジババの奇妙なミルクホールやら、
朝市のある公園などは、昨日読んだ本よりもハッキリと記憶に残っている。
わたしも、スケッチブックに書き溜めたボードレールまがいの詩などを投稿して不評をかった覚えがあるが、
本というのは時代を経るに従い、不思議な存在感をみせるものだ。
今、クラス会などをするとただちに話題にのぼってくるのもこの本だ。
何故なのか。
理由は分からないが、懐かしさだけではない、失われない何かがあるのかも知れない。
写真もアルバムも色褪せて、このような時も在ったと思い出の世界に入り込んでしまうが、
「寄席」は違う。
私の手許にはもうその小冊子は無いが、まざまざと記憶に浮かんで来るのである。
四十年経った今、何故かそれは色を失う事が無いのだ、むしろその存在の輝度を増していると言っていいのかも知れない。
T島君から聞いて驚いた、
家を継いで旋盤工となったはずのS村は、数年前、何処かでジャズピアノの弾き語りをやっていたそうだ。
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