2008年3月27日 (木)

「ザジズゼゾ」 No.20

「神と人間はいよいよ袂を分かつか…。」オセイ・ガーナの青白く光った顔は物凄かった。
「この世が、創造者の思うとおりになぞゆく訳が無い!ズ、ズ」口の中のチョコレートを溶かしながらぽつりと独り言を付け加えた。

天候は気が違ったように荒れ狂い、まるで地球の心臓に青いレーザーの杭が打ち込まれたかの様相だ。その場の人間は嵐に放り込まれたごとくに何かにしがみついた。
すべての人が、放心状態でその光の柱をしばし眺めてた。
「とんでもない予感だ!」ダリがつぶやいた。
大音響とともに放電する根元から、何か巨大なヒトダマのを思わせるものがカチ現われた!?

「うおおう?何事だ!」ダリは仰け反り見上げ言った。
それは、人のかたちをとりはじめた。
飴細工のようにどろりと曲がりながら膨らみ、ゆっくりと巨大な人のかたちになった。
「キルミーはママの味…。こいつはキルミーマンだ!みんな伏せろー。」オセイ・ガーナが怒鳴った。
「甘いモノは、身体を弱くする。骨なしにするつもりだ!甘い物の霊魂化で神をがたがたにするつもりだぞ。ザジズゼゾは!」ダリも尋常でない声で叫んだ。
「もとはといえば、創造者の意志と、その鋳型が五十六億年かけてこの世に人間までを作りえた。しかし、神は失敗した。意に反するということを人間は覚えたのだ、もはや創造者の筋書き通りには行かんぞ!」ダリとオセイ・ガーナは、急を告げる場でおかしな叫び合いをしていた。

「意志を持った人間は鋳型を嫌う!」
「そのとおり!」
「産みの親であろうが、いつまでもおっぱいにしがみついているのは呆け者のすることだ。ましてや、親の思惑どおりの道など誰が歩けるというのだ?へそが茶を沸かすぞ。」
「反抗期に入った人間は、本気で不可知の領域に捨てさられたのだよ。」オセイ・ガーナは弱まりもしない風に立ち上がって言った。

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2008年3月26日 (水)

「ザジズゼゾ」 No.19

そこまで話すとダリは、取り巻いていた野次馬に向き戻り、大声で怒鳴った。
「ザジズゼゾ様の御成りだ!われらを神々の惨殺から救って下さるのは、このザジズゼゾ様よりおらぬ!いよいよ神々と決別するときが来たぞ!人間は弱いが一人ではない。ザジズゼゾ様は人間の“不可知”そのものだ!我ら“生き物”であり人間だ。」
イワオは、なんとも照れくさくいかがわしい思いをしてその人々を一望した。

「おお、ザジズゼゾ様、ありがたい!俺たちにご加護を!」
「わしらは先祖からの神々に見放されたどころか、家の中で、つぎつぎと家族を殺されている。」
「我らを守るはずの神々が、祖父を、長老を、子供を、他愛もなく惨殺した!」
「神々は、俺たちを道連れに、この世界から破滅しようというのか?」
「何かが狂っている、何かが狂ってしまっているんだよ!」
「神々と戦うしかない!」
「俺たちは、何も悪いことはしてない。」
「都合が悪くなったら、虫けらのように皆殺し、こんなことが、まかり通っていいのか?
神さまにだって、おめおめと遣られてたまるけー!」

それぞれの口々に叫ばれた事実は、信じられないことばかりだった。
「ボイドの蔓延もそこに原因があるな。」オセイ・ガーナがチョコの口を動かしながら、上目遣いで空を見上げた。
耳をつんざく轟音でザジズゼゾがもう一吼えすると、薄ら青いレーザーのような火柱が、壮絶に大地から立ち上がった?

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2008年3月17日 (月)

「ザジズゼゾ」 No.18

ザジズゼゾがチョコを食べた途端一吼えすると、化け物クラゲはあれだけの数がまったく消えた!
「わあ、なんてこった!」目を細めて眺めていたオセイ・ガーナも、その威力に舌を巻いた。
「すごいにも程がある…。」ダリがつぶやいた。
「一体どれだけの力を発揮するのやら、見当がつかんな。腹が減れば減るほど強力になるということか?」頭を並べて二人は空を仰ぎ見た。
「ただ、ザジズゼゾとはいえイワオでもある。腹が減りすぎると死ぬこともあるし、凶暴になって理性を失いかねん。」ダリが言った。
「なあダリ、これ、うまいぞ。貴様才能がある。」オセイ・ガーナはチョコを真剣な顔でじっと見つめた。
「がはは、照れるぞ。」
木琴をたたいていたココも、こちらに大口を開けて目をギョロギョロさせ合図した。
ダリは残ったチョコの欠片を放り込んだ。
そして、ダリは、つるつるの頭を撫でながら向き直り、話し始めた。
「俺の話は難しくない。どう言う訳か俺たちは道を踏み外した。怒りの神々が俺たち全員殺そうとしている、それに対しての決戦だ。ザジズゼゾの力が欲しい。」

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2008年3月12日 (水)

「ザジズゼゾ」 No.17

イワオは不思議だった。
ザジズゼゾに変身した実感はほとんど無かった。
自分自身の変革はどこか遠いところに感じられるが、何事も変わっていないというのが正直なところだった。しかし、一吼え後に異様な空腹感を覚えたのは何なのか?
その空腹感が、自分の中の安定感を磐石に増したような気がした。
ぐぅー、と腹が大きく鳴った。

ダリから手渡されたものを開くと、チョコレートであった。
「ザジズゼゾ、それをカジれ!貴様の能力は奇跡のものだが、使うエネルギーも半端じゃねえはずだ!しかもしかもだ、腹が減っているときの方が途方も無い力が出るはず。
…しかしだ、
食わないわけにはゆかんのよ。
俺が調合したメデスンフーズのチョコだ!甘さはひかえめだ!」

ぐぐぅー。
再び、こちらからも腹の鳴る音がした。
「ダリ、貴様メデスンフーズに精通しているようだな!
ところで、俺にもくれんか、そのチョコ!」オセイ・ガーナは、振り返ったダリの目と鼻の先に突っ立っていた。


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2008年3月11日 (火)

「ザジズゼゾ」 No.16

「俺の名は、ダリ。この際そんなことはどうでもよい!凄い凄い!ザジズゼゾを見ろ、一吼えで、このクラゲの化け物をすでに数百匹も打ち落としたぞ、早くもだ!」ダリは、仰け反るように高空を見上げた。
「ダリ?ふーむ、聞かん名だが、ほほう、貴様にも見えるか。」オセイ・ガーナが、ダリのつるつるの頭を後ろで目前にして言った。
「俺様でも、どのようにしても払うことの出来なかった化け物がな!それにこの木琴は感度がず抜けておる。クラゲの内臓まで見えるようだ。これなら見込みがある。」
ダリはしばらく天空を凝視し続けた。
一緒にくっ付いて来た取り巻きまで、手をかざしながら、うなずき見上げているのが滑稽であった。
「…うむ、俺にもそこまでは今まで見えなかったぞ!あのような高空までクラゲの化け物がうじゃうじゃと流れているのは…。本体の母船のようなものの口から、凄い数のクラゲが出入りしているのが知れた!これほどの数とは仰天だ!」
ダリは、振り返りざまザジズゼゾの目の前に立つと、袋から何物か取り出して渡した。
銀紙のようなものが日光で反射して強く光った

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2008年3月 7日 (金)

「ザジズゼゾ」 No.15

ボイドとは正体不明の空のことだ。
これにつけ入られると、むなしい気持ちになり、己の失敗にも鈍くなる。
ボイドがこれほど蔓延しているからには、ザジズゼゾは戦いを決意せざるを得ない。
その発生は不明だが、集中と意識の糸から心が解放されると、すぐさま人間の心はボイドに捕獲されてしまう。ザジズゼゾには、ボイドそのものは空間に大きなクラゲが浮遊しているように見える。

メデスンマンの家の中庭に、突然男が入ってきた。
後には、薄汚い数十人の取り巻きやら野次馬を引き連れていた。 
その不思議な気配から只者で無いのが分かる。男は、上半身裸で渋い緑縞に赤の伝統服をゆったり履き、頭は剃っていた。
「わはは、来た、来た。待っていた待っていたぞ、ザジズゼゾ!」男は遠慮も無く大声で叫んだ。
ずかずかと、ココの木琴の前に来ると、脇に挟んだ汚い袋から弓矢のようなものを取り出した。
ココは一瞬ギョッとしたが、それを機にますます曲に没入していった。
男はニヤリとして弓の弦の一部を口に含むみ、短い棒で、たたき合わせながら呪文の歌を唄い始めた。
「アイオオー、オゥオゥオゥー♪
ニィニャガンゼオン
ニィニャガンゼオン
アイオオー、オゥオゥオゥー、♪アオ!」
言葉とも歌ともつかぬ声と弦の響きが一つになり、そこにいた一同には何かの形が見えるような錯覚があった。
「貴様も、メデスンマンだな?」男に向かって、オセイ・ガーナが言った。

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2008年3月 5日 (水)

「ザジズゼゾ」 No.14

ここにザジズゼゾが四百二十年ぶりに再来した!
すべての人々が嘆き悲しんだストロングウォーリア・ザジズゼゾの殉死から、
はるかに人も時間も代わったが、その再来は語り継がれていたのだ。
これは、インディゴなどと呼ばれる新種の人類の事ではない。
人間を生み出した魂そのものが、人間の不可知の知恵により、吹き上がる溶岩のように露出した、と、見るのが正しい。

イワオは憑依されたわけではない。ザジズゼゾとはイワオ自身でもある。
意識というものは、個人の顕在意識だけを指すものではないのである。
無意識の領域は、未曾有といえる。
イワオのどこかに在った無力感はまったく消えた。
数千倍に研ぎ澄まされ、活用された意識というものは、何事が起こりうるかも見当のつかない能力を持つ。
ココのほとんど体当たりの前代未聞のアレンジが生み出した反ブラックスタアの本質は、メデスンマンの当意を得た儀礼で、今やザジズゼゾを現前させたのである!

いったいザジズゼゾとは何か?
それは、不可知の魂とも言えるかもしれない。
精悍な黒い獣のような存在に変わったイワオだが、
イワオの人格が変わった訳ではない。
存在のそのまた深くに存在したものが、突然に現われ出たにすぎないのだ。
ただ、その意識統合と速さは、獣の一体感に似ていた。

ザジズゼゾは、空気をビビらすほどの咆哮を空中に吐いて、何者かを威嚇した?
イワオには、“ボイド”が見えていた。

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2008年3月 3日 (月)

「ザジズゼゾ」 No.13

帽子に靴にジンだった。大急ぎに靴を履き、帽子を被って正装すると、
メデスンマンは、木琴のレリーフのあるカップに手早くジンを注いだ。
何やら真剣に呪文を唱え、ココの弾く木琴と、地面に、ジンを少量振り撒いた。

イワオは半分は信じていないが、半分は何か起こる予感に興奮した。
何事も変わらないようで、気持ちは、やっぱり変わらないという事に安堵していた。
ところが、ところがだ!自分の身体に、みるみるうちに力が満ちてくるのが感じられた?
指の先から肌が真っ黒に変化して、黒人のがっしりした体躯となった。
牙のような真っ白な歯が口からはみ出すように生えた。

「ザジズゼゾ!」メデスンマンがイワオを振り返り、声を上げた。

「ザジズゼゾが帰ってきた!亡き勇者が、今、戻ったぞ!」メデスンマンは大声で叫んだ。
イワオは言葉の無い世界に居た。意識は通常の千倍をもハッキリしていた。
魂そのものが意識なのかも知れなかった。行動がそのまま己でもあった。
いや、…原始の精霊そのものが個の肉体を持ち顕現した、と言えば分かりやすい。
イワオは、といえば、すこぶる爽快であった。


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2008年2月28日 (木)

「ザジズゼゾ」 No.12

「本当のはじまりかも知れんな。」メデスンマンが言った。
ココは、何かが執りついたような目つきをした。ビーターを取ると木琴の前に脱魂したように座り、弾き始めた。

ココのアレンジ、そのあらましはこうだ…。
まず、ブラックスタアの対となる骨格は変わらずに別れ、2拍と3拍の原型を保ちながら、リズムは、無相となり、あらゆるものに変化し始めた。
あるときは歩行の2拍を意識しながら、3,6,9、の数が動きに加わった。
全体が喋りの概念を維持しながら、リズムは骨格にしばられず軽やかに滑降した。
その中でも、フレーズの頭を抜くような遊びが何度もジグザグにみずからを遊んだ。
あらゆるものがそのフォルムを流水のように変えると、意味までもがするりと変わった、
たった一つで。
色彩に溢れつつ色彩が消えた。まったく無相と呼ぶに相応しかった…。
何か意味の深い読経のような喋りが言葉を開放されたかに思えた。
…このように言い出したらきりの無い事でもあるが…。

メデスンマンは、だまって聞いていたが、やがて顔色を変えた。
「ココ、そのまま続けてくれ!」
何か急いで家に取りに戻ると、慌てて戻ってきた。

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「ザジズゼゾ」 No.11

イワオは、疑念を持った。

「自分にはやることがある」と思うことが、雲を沸かせM精神病院隔離病棟まで来させた。テスラ博士の亡き後、雲は急激に冷え、イワオの考えは百八十度変わった。
恐怖と支離滅裂が、暗雲のように押し寄せたのを思い出した。
入院直前には、「することなど何も無い」という開放された気持ちに進化したことも。自分が生かされている事を感じ取れるまでになっていたことも。
しかし、隔離病棟はそのようなものを一切認めるものではない。

今はといえば、土砂降りがすべての雲を払い、深山幽谷の気を湛えた心境であった。
生還した探検家のような瞳孔の色だけがその深さを知っていた。

この期に及んでこの符合は何なのか?
それが疑念であった。

木琴のレリーフのカップを空にしたメデスンマンは、何事も無く紫煙を燻らせ、空を見ていた。
ふた筋の輝く飛行体が、遥か高空を横切って行くのが見えた。

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